人材サービス(特定職種に特化した転職支援)/Meta広告単独

Before:11月(施策前)
実CPA(指数)100
実CV126件
広告費(指数)100
After:5月(絞り込み後)
実CPA(指数)80
実CV130件
広告費(指数)82

3月は管理画面上のCPAが37%改善したが、実際の登録単価は13%悪化していた。見かけの改善を追わずに絞り込んだ結果、7ヶ月で最も効率の良い着地にたどり着いた。

数値の扱い:クライアント名・サービス名・金額の実額は伏せています。広告費とCPAは2025年11月を100とした指数(CPAは同月の実CPAを100とし、媒体CPA・実CPAを同一基準で並べています)、CTR・CVR・構成比は実数、CV件数は実数です(CV件数と指数からは金額を復元できないため)。

① クライアントの課題

Meta広告1媒体での配信。CVは自社LPのフォーム登録(=応募の本登録)で、そこから面談へ進む。

顧客リストの類似1%オーディエンスを主軸にした設計で、実CPAは3ヶ月ほぼ安定していた。

11月12月1月
広告費(指数)10090108
実CV(件)126136147
実CPA(指数)1008392

問題は、クライアントの目標が月200件だったこと。その水準には届いていなかった。

そして1月末から成果が崩れた。CPMが1月→2月で+19%に高騰し、CPMが上がった局面ではCVRも同時に落ちていた。原因は特定できていた。類似1%の推定リーチは8万人程度しかなく、3ヶ月間ほぼ同じ層に配信し続けていた。同じ人に当て続けていたということ。

ターゲットの拡張余地も薄かった。地域と年齢をかなり絞った設計で、そこを緩めるとCPAが崩れる。

LP登録という1つのCV地点だけでは、母数が足りない。CV地点そのものを増やす必要があった。

② 実施した施策と意図

2月末に、Metaのインスタントフォームを追加した。Metaのアプリ内でフォーム入力が完結する、摩擦の低いリード獲得の形式。LPまで遷移させずに連絡先を取れる。

  • LP導線とフォーム導線は別キャンペーンに分けた(キャンペーン名に _CPA_ = LP導線、_LEG_ = フォーム導線を入れて識別する)
  • フォーム回答だけでは本登録にならないため、回答後にLPへ送って本登録してもらう導線を前提に置いた
  • 同時期に、類似1%の広告セットを統合し、類似3%を検証、訴求ごとに広告セットを分割した(ターゲット反復の解消)

もう一つ、この案件では運用開始時から、CV件数を2系統で記録していた。

  • 媒体CV:Metaの管理画面が返すCV数
  • 実CV:登録完了のメール通知を数えた件数

この2つを日次で並べたレポートを、クライアントと共有していた。

これはインスタントフォームを検証するために作ったものではない。運用開始時から、媒体の計測値だけでは実際の応募数と合わないという前提で置いていた列である。結果的に、この施策を評価できたのはこの列があったからだった。

③ 数値結果(Before / After)

全体の数字は、3月に劇的に改善した

11月12月1月2月3月4月5月
広告費(指数)10090108911389182
CTR0.93%0.93%0.84%1.22%1.28%1.28%1.19%
媒体CV(件)122129142156372160124
媒体CVR7.95%8.25%8.72%9.21%12.42%8.33%7.99%
媒体CPA(指数)103889574477284

2月→3月で、媒体CVは156件→372件(2.4倍)、媒体CPAは-37%。広告費を+51%に増やしながらCPAが4割近く改善している。管理画面だけを見れば、この案件は3月に別物になった。

同じ月の実CVを並べると、逆を向いていた

11月12月1月2月3月4月5月
媒体CV(件)122129142156372160124
実CV(件)126136147133178128130
乖離(件)+4+7+5-23-194-32+6
実CVR8.21%8.70%9.02%7.86%5.95%6.66%8.38%
実CPA(指数)100839287989080

媒体CPAが-37%だった月、実CPAは+13%で悪化している。

  • 実CVは133件→178件(+34%)に増えた。件数としては過去最高
  • ただし広告費は+51%。増えた分に見合っていない
  • 実CVRは7.86%→5.95%に落ちている。媒体CVRは9.21%→12.42%に上がっている。同じクリックを見て、2つの指標が正反対に動いた
  • 3月の乖離は194件。媒体が返したCVの52%が、本登録に到達していない

ここで重要なのは、11月〜1月は実CVの方が多いという点である(+4、+7、+5件)。媒体が拾えない登録を、完了通知が拾うため、平常時は実CV>媒体CVになる。

だから「媒体CV>実CV」が出た瞬間に、これは異常だと分かる。比較する平常時の形を持っていたことが、2月の-23件の時点で気づけた理由だった。

3月を導線別に分解すると、改善の正体が出てくる

3月広告費構成比媒体CV媒体CPA(指数)
LP導線(類似1%)54.3%10094
フォーム導線39.2%26526
LINE導線(検証)4.7%6137
カレンダー導線(検証)1.8%1313

媒体CV 372件のうち265件(71%)がフォーム導線である。媒体CPA指数26=LP導線の4分の1以下。全体の媒体CPAが47まで落ちたのは、この1本が平均を引き下げたからだった。

そして、LP導線だけを取り出すと、こうなっている。

LP導線のみ2月3月4月前半
媒体CPA(指数)8194107

全体が74→47に「改善」した裏で、LP導線単体は81→94→107と一貫して悪化していた。元の課題(ターゲット反復による効率低下)は、まったく解決していない。

フォーム回答265件のうち、本登録に至ったのは推定71件(約27%)。3月のLP・LINE・カレンダー由来の媒体CV107件がすべて本登録になったと仮定した差分であり、推定値である。2月についても、フォーム回答23件に対して実CVは通常導線の媒体CV件数と同数(133件)で、本登録は推定0件だった。

絞り込んだ後の着地

4月以降、フォーム導線を主軸から外した。

3月4月5月
広告費(指数)1389182
実CV(件)178128130
実CPA(指数)989080
乖離(件)-194-32+6

5月は広告費指数82で実CV130件、実CPA指数80。7ヶ月で最も良い実CPAである。乖離も+6件に戻り、平常時の形に復帰した。

3月の「CPA-37%」を成果として報告し、そのまま予算を寄せていたら、この着地には辿り着いていない。

(6月以降は本稿の対象外。5月が最終の満月データである。)

④ 再現できるポイント

1. CVポイントを下げれば、CPAは必ず改善して見える。 改善したのは効率ではなく定義である。低摩擦CVは母数を増やすが、後段の転換率を掛けないと元のCV1件と比較できない。今回はフォーム回答1件が本登録0.27件相当だった(推定)。回答単価が4分の1になっても、転換率が4分の1なら何も変わっていない。

2. 媒体CVと実CVは、施策を始める前から2系統で持つ。 平常時は実CVの方が多い。媒体が拾えない分を登録通知が拾うためである。この平常時の形を持っていて初めて、「媒体CV>実CV」が異常として見える。後から作ろうとすると、比較すべき平常時のデータが存在しない。計測は施策の前に置くしかない。

3. 合計の指標は、性質の違うものを混ぜた瞬間に読めなくなる。 全体の媒体CPAは-37%、LP導線単体は+17%。同じ月の同じアカウントである。導線ごとに分けて見なければ、悪化を改善と読む。分けるためには、キャンペーンをCV地点ごとに切っておく必要がある。あとから広告単位で仕分けることはできない。

4. 低摩擦CVは「やめる」ではなく「役割を変える」で扱う。 フォーム回答者は本登録していないが、連絡先を残した見込み客ではある。獲得単価を測る指標からは外し、リターゲティングの母集団を作るコストとして評価する方が実態に合う。獲得施策として評価すると数字が壊れ、母集団形成として評価すると成立する。同じ施策でも、どの枠で測るかで結論が変わる。(これは打ち手の提案であり、実運用で検証した結果ではない。)

5. 月次目標は、どのCV定義で置いた数字なのかを最初に揃える。 「月200件」という目標に対して、3月は媒体CVでは372件で達成、実CVでは178件で未達である。同じ月・同じアカウントで、達成と未達が同時に成立する。目標を数字だけで合意すると、報告の段階で必ず食い違う。定義を先に書いて渡しておく。

まとめ

CV地点を増やす施策は、成果を動かす前に「成果の定義」を動かす。

3月、管理画面のCPAは37%改善した。同じ月の実際の登録単価は13%悪化していた。媒体が返した372件のうち194件(52%)は、本登録に到達していない。全体が改善して見えた裏で、元からあるLP導線のCPAは指数81→94→107と一貫して悪化しており、最初の課題は何ひとつ解決していなかった。

これに2月の時点で気づけた理由は、運用の巧拙ではない。媒体CVと実CVを、施策を始めるより前から2系統で記録していたからである。平常時は実CVの方が多い、という形を知っていたので、逆転がその月に異常として見えた。

低摩擦CVは母数を増やす手段として有効で、実CV件数は過去最高の178件に伸びた。問題は施策そのものではなく、それを元の指標と同じ土俵で評価してしまうことにある。回答単価が4分の1でも、本登録への転換率が4分の1なら、何も変わっていない。

絞り込んだ後の5月は、広告費指数82で実CV130件・実CPA指数80。7ヶ月で最も良い数字は、CVを増やした月ではなく、CVの数え方を元に戻した月に出た。

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