※7月は本稿執筆時点の速報値です。確定後に差し替える場合があります。
「クリエイティブが疲弊した」で終わらせず、月ごとの投入本数と1本あたりの成果を分けて見ることで、1ヶ月で立て直した。
数値の扱い:クライアント名・商材の詳細・金額の実額は伏せています。広告費・売上・CPAは2026年5月を100とした指数、ROAS・CVR・CTRは実数、CV件数と投入本数は実数です(CV件数と指数からは金額を復元できないため)。金額基準はグロス税込。
① クライアントの課題
Meta広告は4媒体のなかで最も効率が良く、CPAは他媒体の半分以下で回っていた。にもかかわらず、月ごとの成果の振れが大きい。
6月はROASが1,712%まで落ちた。前月比で広告費はほぼ同額なのに、CVは14%減っている。
| Meta全体 | 5月 | 6月 | 7月 |
|---|---|---|---|
| 広告費(指数) | 100 | 102 | 92 |
| CV(件) | 553 | 478 | 493 |
| 売上(指数) | 100 | 86 | 98 |
| CTR | 3.28% | 2.94% | 3.56% |
| CVR | 2.42% | 2.04% | 2.31% |
| CPA(指数) | 100 | 118 | 103 |
| ROAS | 2,035% | 1,712% | 2,180% |
原因が「クリエイティブの疲弊」であることまでは、月次の定例でも共有できていた。問題は、その先が誰にも分からなかったこと。疲弊しているなら何を何本入れ替えれば戻るのか。動画に寄せるべきなのか。判断の根拠がなかった。
② 実施した施策と意図
やっていたことは、毎月10本前後の新規クリエイティブを切らさず投入し続けることだけ。
- 静止画・動画・オーガニック投稿の広告転用・セール専用を並行で回す
- セール専用は既存キャンペーンと分けて別建てにする(既存の学習を壊さないため)
- 商品フィードを使ったダイナミック広告は常設で置いたまま触らない
これに加えて、運用開始時から広告名に投入日を必ず入れる命名規則を維持していた(例:IMG-XXX_CR000_260714 の末尾6桁が投入日)。
この命名規則が、後から効いた。広告単位のデータを投入月でグループ化できるため、「いつ入れたクリエイティブが、何ヶ月目まで稼いだか」を後から遡って測れる。当初は管理のための命名規則で、分析のために設計したものではない。
③ 数値結果(Before / After)
※7月の数値は本稿執筆時点の速報値です。後追いの計測分により確定値へ差し替える場合があります。
種別で分けると、動きが正反対だった
| 静止画 | 5月 | 6月 | 7月 |
|---|---|---|---|
| 広告費(指数) | 100 | 81 | 86 |
| CV(件) | 337 | 177 | 299 |
| CTR | 2.72% | 2.74% | 3.67% |
| CVR | 2.60% | 1.51% | 2.19% |
| CPA(指数) | 100 | 154 | 97 |
| ROAS | 1,883% | 1,286% | 2,214% |
| 動画 | 5月 | 6月 | 7月 |
|---|---|---|---|
| 広告費(指数) | 100 | 150 | 113 |
| CV(件) | 197 | 283 | 177 |
| CTR | 5.01% | 3.30% | 3.30% |
| CVR | 2.17% | 2.65% | 2.58% |
| CPA(指数) | 100 | 105 | 126 |
| ROAS | 2,586% | 2,312% | 2,167% |
6月の不振は静止画で起きている。CVRが2.60%→1.51%に落ち、CPAは1.5倍に悪化した。動画はむしろCVが増えている。
そして7月の回復も静止画で起きている。ROASは5月を超えて2,214%まで戻った。動画は5月から一貫して下降している(2,586%→2,312%→2,167%)。
投入月で分解すると、原因が特定できる
各月のCVを「そのクリエイティブをいつ投入したか」で割り振った。
| 5月 | 6月 | 7月 | |
|---|---|---|---|
| 静止画 当月投入の本数 | 12本 | 10本 | 11本 |
| 静止画 当月投入分のCV | 181 | 109 | 172 |
| → 月次CVに占める割合 | 54% | 62% | 58% |
| → 1本あたりCV | 15.1 | 10.9 | 15.6 |
| 動画 当月投入の本数 | 9本 | 9本 | 6本 |
| 動画 当月投入分のCV | 115 | 206 | 82 |
| → 月次CVに占める割合 | 58% | 73% | 46% |
| → 1本あたりCV | 12.8 | 22.9 | 13.7 |
投入本数は3ヶ月ともほぼ一定。動いたのは1本あたりの成果だけだった。
- 6月の静止画:本数は10本で前月と大差ないのに、1本あたりが15.1→10.9CVに落ちた(-28%)
- 7月の静止画:1本あたりが15.6CVに戻り、CVは299件まで回復
- 7月の動画:1本あたりは13.7CVと戻ったが、投入が6本に減ったためCVは177件に落ちた
つまり月次の振れは、その月に投入したクリエイティブの当たり外れでほぼ説明がつく。「クリエイティブが疲弊した」のではなく、「新しく入れたものが当たらなかった」月だった。
例外がひとつある
2024年9月に投入した静止画2本だけが、投入から約20ヶ月経っても月28〜46CVを出し続けている。うち1本は商品フィードを使ったダイナミック広告で、5月29件・6月28件・7月26件とほぼ一定。
他のクリエイティブが1〜3ヶ月で入れ替わるなかで、この2本だけが減衰していない。
④ 再現できるポイント
1. 成果の5〜7割は、その月に投入した新規クリエイティブが作っている。 3ヶ月とも46〜73%の範囲に収まった。裏を返せば、投入を止めた月は即座に落ちる構造になっている。クリエイティブ制作は「余裕があればやること」ではなく、成果を維持するための必須コストだと数字で示せる。
2. 成果が落ちた月は「本数」と「1本あたり」に分けて見る。 打ち手がまったく違う。本数が落ちていたなら制作体制の問題で、増やせば戻る。本数が同じで1本あたりが落ちているなら訴求の問題で、本数を増やしても解決しない。今回は後者だった。この切り分けをせずに「疲弊したから入れ替える」と動くと、本数だけ増やして外し続けることになる。
3. 単月の数字で媒体やフォーマットの優劣を判断しない。 6月の数字だけを見れば「静止画が疲弊したので動画に寄せる」が正しい判断に見える。実際その月の動画はCVが増えていた。しかし7月は逆に、静止画がV字回復して動画が下降した。1ヶ月の差はクリエイティブの当たり外れに埋もれる。フォーマットの優劣を語るには最低3ヶ月要る。
4. 「毎月入れ替える枠」と「入れ替えない常設枠」を分けて設計する。 ダイナミック広告は商品フィードを差し替えて配信するため、クリエイティブとしては疲弊しない。20ヶ月動き続けて月30件前後の土台を作っている。全部を入れ替え前提で組むと、制作が止まった瞬間にゼロになる。土台を常設で確保したうえで、変動分を入れ替えで積む構成にする。
5. これができる前提は命名規則。 広告名に投入日が入っていなければ、この分析は後から一切できない。管理画面の標準レポートは「いつ入れた広告か」を持っていないため、運用開始時に決めておかないと、1年後に取り返せない。新規アカウントの初期設計で必ず入れる。
同じような数字の振れに心当たりがあれば、無料の広告アカウント診断へ。
無料アカウント診断に申し込む